2014年4月12日土曜日

第五章 この出来事の終わり:その二

第五章 この出来事の終わり:その二

 スクルージは、急いで窓まで走って行き、一つの窓を開けた。
そして、彼は身をのり出した。
 外は、霧もなければ、かすみもない。澄んで、明るく、愉快で、
壮快な寒さが心地よかった。
 寒々とした風が笛を吹いて、生命が踊るようだ。
 金色の日光。
 天国のような空。
 清らかで新鮮な空気。
 陽気なベルの音。
 おお、すばらしい!
 すばらしいぞ!

「ちょっと君! 今日は何日だね?」と、スクルージは叫び、真
新しい服を着て、下を向いたまま歩いていた少年に呼びかけた。

 少年は、辺りを見回し、声のした方を探して、スクルージと目
が合った。

「ええ?」と、少年は聞き返した。彼は力いっぱい驚いていた。

「今日は何日だね? そう君だよ」と、スクルージは言った。

「今日?」と、少年は耳を疑った。
「何を言ってるんですか。今日はクリスマスの日じゃないですか」

「そうだ、クリスマスの日だ!」と、スクルージは自分自身に言
い聞かせた。
「私は間に合った。精霊様達はそのすべてを一夜でされたんだ。
精霊様達は好きなように何でもできるんだ。いや、神様がなされ
たのかもしれない。そうだ神様なら出来る。神様がそうなされた
んだ。おはよう。少年!」

「おはようございます!」と、少年はあいさつをした。

「ところで君は、鶏肉屋を知ってるかい? 次の通りをもう一つ、
その角の・・・」と、スクルージは聞いた。

「行ったことがあると思います」と、少年は応えた。

「賢い少年だな!」と、スクルージは言った。
「賢い少年よ! 君は、その店先に掛けられていた七面鳥が売れ
たかどうか知ってるかい? 小さい方の七面鳥じゃなくって、一
番大きい方の七面鳥だよ」

「ええ、一番、僕くらい大きいのですか?」と、少年は聞き返し
た。

「ほほほっ、面白い少年だ!」と、スクルージは言った。
「彼と話すと愉快だな。そうだよ、君」

「それなら、その店先に今でも掛かってますよ」と、少年は応え
た。

「まだあるのか?」と、スクルージは言った。
「君、それを買って来ておくれ」

「ご冗談でしょ!」と、少年は叫んだ。

「いや、いや」と、スクルージは言った。
「私は真面目だよ。その大きい七面鳥を買って来ておくれ。そし
て、店の人にそれをここえ持ってくるように言っておくれよ。私
は店の人に、どこへそれを持っていくか指示を与えるから、運ん
でくれる人を連れて戻っておいで。そしたら私は君に1シリング
あげるよ。五分以内にその人と戻っておいで。そしたら私は君に
もう半クラウンあげるよ」

 少年はすぐに去った。彼は震えない手で銃の引き金をひいたに
違いない。そうでなければ、誰があんなにすばらしい速さですぐ
に去ることができるだろう。

「私はそれをボブ・クラチェットへプレゼントしよう」と、スク
ルージはささやいた。彼は手をこすった。そして、おかしくてた
まらず笑った。
「彼はそれが誰からのプレゼントか知らないんだ。それは、あの
病弱なティムのサイズの二倍はある。ジョー・ミラーはこんな冗
談は絶対に創作しないね。ボブにそれをプレゼントしたらどうな
るだろう!」

 スクルージは、メモする紙を探して、それにボブの家の住所を
急いで書いた。だから、その文字は一つも落ち着いていなかった。
しかし、彼はなんとかそれを書き終わった。そして、階段を下り
て行き、出入り口のドアを開けて、鶏肉屋の人が来るのを待った。
彼はそこに立って、ウキウキして到着を待った。ドアのノッカー
が彼の目にとまった。

「私はこれを見るたびに思い出そう。そして、君の言葉を大事に
するよ。私が生きてる限り!」と、スクルージは叫んだ。彼は愛
情をこめた手で、やさしくノッカーをパタパタと鳴らした。
「私は前からこのノッカーをほとんど見ていなかった。なんて、
正直そうな表情をしたお顔だこと。なかなかすばらしいノッカー
だ。やあ、こっちだよ! 七面鳥をここに。おはよう! ほう!
どうだい調子は? メリークリスマス!」 

 それは、立派な七面鳥だった!
 この七面鳥はとてもじゃないが自分の脚では立つことができそ
うもない。もし立とうとすれば、その脚はポキンと折れるだろう。
それも、もろく瞬間にだ。シーリングワックスの棒のようにだ。

「おや、これは無理だ。カムデン・タウンに運べないな」と、ス
クルージは言った。
「あんた、荷馬車にしてくれよ」と、スクルージはクスクスと笑っ
て言った。そして、彼はクスクスと笑って、七面鳥の支払いをし、
荷馬車の支払いをし、少年に約束のお駄賃もあげた。ただ一人、
クスクスと笑いすぎてしまった。

 スクルージは、部屋に戻ると息をきらして彼のイスに座り、ふ
たたび、また彼は泣くまで、クスクスと笑った。