2014年4月12日土曜日

第四章 第三の精霊:その九

第四章 第三の精霊:その九

 やがて精霊とスクルージは、鉄の門まで到着した。
 スクルージは入る前に、ちょっと立ち止まり、辺りを見た。

 教会の墓地。
 そこは価値のある場所だった。
 壁をめぐらせた家のそばで、芝生や雑草がはびこっていた。
 草木の生長は終わり、枯れていた。
 得体のしれない生き物が、とても多く埋まり、悪臭を放ってい
た。
 毒々しい鮮やかな色のキノコが、おうせいな食欲で太っていた。
 価値のある場所だ!

 精霊は立ち止まって、その中の一つの墓石を指さした。
 スクルージは、ブルブルと震えながらそちらに歩み寄った。
 それでも精霊は、まったくそのままだった。しかし、スクルー
ジは恐れた。彼はその厳粛な姿の中に新しい意味を見出した。

「あなたの示す墓石に私が近づく前に・・・」と、スクルージは
言った。
「私の一つの質問に答えて下さい。これが私の墓ということでしょ
うか? それとも、ボブの子のティムの墓ということでしょうか?
どちら?」
 スクルージは、自分には立派な墓を造れるぐらいの財産があり、
これは貧乏なボブの子のティムの永眠する墓で、精霊はまだ自分
に何かの教訓を与えようとしていると思った。

 まだ精霊は下向きに示し、そして、それは立っている殺風景な
墓石に向けられていた。

「精霊様のお持ちの砂時計は、きっと私の人生が終わる前兆を教
えてくれるのでしょう。どちらにしても、もし、この悲しみを我
慢したら、精霊様は、私を導いてくださるのですね」と、スクルー
ジは言った。
「しかし、もし、私が人生をやり直したとしたら、その終わりは
変わるでしょう。ここで何を精霊様は私に示そうとしているので
しょうか? それを教えてください」

 精霊は依然として動かなかった。

 スクルージは、墓石に向かって忍び足で歩いた。彼は震えなが
ら行った。そして指に従い、墓石の上を読むと、誰も訪れること
のないこの墓石に彼自身の名前があった。
 エベネーザー・スクルージ。

「そんなはずはない! 私の墓はもっと立派なはずだ!」と、ス
クルージは膝をついて叫んだ。

 精霊の指は、墓石からスクルージの方に向けられた、そして、
また元に戻った。

「なぜこんなことに・・・、精霊様! 私がユダヤ人だからです
か? もしそうだとしたら、マーレーにあんな立派な墓は出来な
かったはず・・・。ああ、まさか、私は財産を誰にも指一本、触
れさせないと、遺言でもしたのでしょうか? 今までの私なら考
えられることです。おお、なんてバカなことを!」と、スクルー
ジは叫んだ。

 スクルージは、精霊が哀れむような目で、自分を見ているよう
に感じた。

「精霊様!」と、スクルージは泣いた。そして、精霊のローブを
グイッとつかんだ。
「お聞き下さい。私は以前の私ではありません。私は以前のまま
ではいられないでしょう。私はそうに違いありません。もし、こ
の体験がなければ、私は気づくことが出来ませんでした」

 精霊の持っている砂時計の砂が、あと少しとなった時、スクルー
ジは胸を締めつけられるような苦しさを感じた。

「もし、私に・・・望みがまったく・・・ないのでしたら・・・。
なぜ・・・私に・・・こんなに・・・辛い・・・体験をさせ・・・
るのですか?」と、スクルージは息絶え絶えに言った。

 この時、初めて精霊の手は震えるように見えた。すると、スク
ルージの苦しさが少し和らいだ。

「善良なる精霊様!」と、スクルージはおいすがった。地面を下
へ上へと、彼は精霊の前にひれ伏した。
「精霊様のお力で、私にチャンスをお与えください。そして、私
に慈悲深い行いを・・・。私は約束します。私はまだ変われます。
私は精霊様から見せていただいた、これらの幻影により、もっと
改心いたします」

 情け深い精霊の手は震えた。

「私は心の底からクリスマスを尊びます。そして、一年中それを
守ってみせます。私は過去のことを心に刻んで暮らします。現在、
そして、未来のことも・・・。すべての精霊様へ。私は努力いた
します。私は皆様に教えていただいた教訓をよくかみ締め、面倒
なことから目をそらしたりはいたしません。おお、私に、この墓
へ入るまでの少しの猶予を与えてもよいと、私におっしゃってく
ださい!」と、スクルージは祈った。

 精霊は苦悩しているようだった。
 スクルージは精霊の手をつかんだ。
 精霊はそれを離そうとした。しかし、スクルージは強く、心か
ら握り締めた。そして、精霊を引き止めた。
 精霊は、より強く、スクルージを突き放した。

 スクルージは、手を上げて最後の祈りを捧げた。すると、彼の
運命は永久に取り消された。彼は精霊のフード、そしてローブの
中に変化を見た。それは縮まり、崩壊した。そして、ベットの下
の支柱の中へ小さくなった。